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 早稲田大学
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item1b1 えんじの人々(5)「学生4年間というかけがいのない時間をたいせつに使ってほしい」

早稲田大学バレーボール部男子監督 吉井勝彦さん(昭和61年・教育学部卒業)  

2009年8月掲載

 

「現役選手たちは、あまり表情には出しませんが、我々が現役のときと同じように負けず嫌いなんです。勝ってうれしいとか負けて悔しいとか、もう少し、オモテに出せばよいのになあと感じます。プレーするスタイルは、全員同じでなくていいんです。だから、自分の個性をもっと出したら、もっともっと楽しくなるのだと思います。」 今年4月から男子監督に就任した吉井さんは、現役の選手に対しての印象を、このようにていねいに暖かく語ってくれました。

 

吉井さんは、昭和57年(1982年)に、群馬県富岡高校から教育学部に入学、バレーボール部に入部。高校時代は”大きなトス”を打つ役目でした。大学1年のときにセンターポジションに抜擢されましたが、クイックの速いイメージがなかなかつかめず、苦労が続きました。3年生の春の合宿で、徹底的にレシーブ練習に励んだのが自信につながり、先輩やOBからも「レシーブがうまい」と太鼓判。これが成長への転機になり、スタメンの座をつかむことができたということです。「合宿ではレシーブの2メンは1時間くらいやっていました。選手を誉めることは自信につながるわけですから、OBの皆さんは時には現役の良いところを誉めてやってください。私もあまり誉めないですけど。。。」と、当時を思い出しながら、選手に期待します。

 

現役時代は、センタープレーヤーとして活躍し、4年時に、東日本大学選手権が準優勝、インカレ3位(ともに法政大に負け)、秋季1部リーグ戦で4位が最高。「白星勘定に入っていた日体大に2連敗して4位になってしまいました。当時、日体には宗雲 さん(現慶応義塾監督)が日体大のライトで活躍されてました」。

現役時代に印象に残っているのは、1年時の春の2部リーグ戦で、1勝8敗と3部との入替戦を覚悟してのぞんだ駒澤大学との最終日最終戦。「4年生が何とかしろ」という当時の古市監督の考えで、スタメンは全て4年生で固め、吉井さんは2階席で応援でした。

しかし、その試合に奇跡的に勝ち、3部との入替戦出場を回避。3部の試合のビデオ撮影から帰ってきた2年生と合流し、抱き合って大喜びしたそうです。もう一つ印象にあるのは、4年時の東日本インカレの決勝戦の対法政戦でした。この試合まで、春のリーグ戦(2 部)から失セットゼロで、東日本インカレ準決勝まで勝ち抜き、決勝も15-6、15-4で2セットを連取し、早稲田は圧倒的な強さを 見せつけていました。同じ日の別の会場の国際試合よりも大勢の観衆が駒沢体育館に集まっていたそうで ただ、勝負は最後までわからない。「1, 2セットを先取し、3セット目の10点以降(確か12点くらいだった)までいったところで、誰の?痛恨のダイレクトスパイクミスで1点 を取り損ねて、そこから逆転して3セットをとられました。4セッ ト、5セット目は、完全に集中力が途絶えて、法政に一方的にやられました。1点の重さと、3セットのうち1セットとれば、試合になるということを考えさせられた試合でした」。やはり、負け試合ほど記憶に残っているもののようです。

 

吉井さんが男子監督に就任してから約8ヶ月。1部復帰を目指して戦った春季リーグは初戦で慶応に完敗して無念の5位に沈み、入れ替え戦の1部チャレンジの機会さえ手に入れることはできませんでした。2011年の創部80周年に日本一を目指したい男子部にとっては、今秋の1部復帰が、現役、指導者はもちろん、OB,大学、関係者の願いです。その重圧も当然に感じています。そのためには、勝つことはもちろん、メンタルな成長を現役に求めています。「ぱっと見た感じは、ダラダラしているところもあって腹立つこともありますが、根は真面目な学生たちだなーと感じるんです。我々が学生のときと同じで、一般の大学生は魅力的なアルバイトをやったり、自由な時間の中で勉強したりという、学生らしい生活を送っているにもかかわらず、運動部に所属すれば、一日中、暑い(寒い)体育館で練習しているわけですからそれは、一般の学生にはとてもできないことで、立派なことだと感じています。だからこそ、良い仲間を得て、様々な良い経験をして卒業して欲しいと強く思いますね。」 そのためには、まず身近なことからはじめてほしいと言う。「勝つという結果も大事ですが、人として成長して欲しいんです。単純なことですが、まずは挨拶が しっかりできる、礼儀正しいチームとしたいです。これは大人も子供も関係なく、生きていくうえで必要なことで、試合に勝っても挨拶ができないようなチーム・人では、勝っても全く意味がないというのが私のこだわりです。」

 

武蔵野市にある会社の職場から、練習会場の上井草の体育館まで、電車とバスを乗り継いで1時間弱。就任直後春季リーグまではほぼ毎日仕事の後に通いつめた。現在は、学生の自主性にも期待して、週に2~3回、週末は土日の両方、上井草に足を運んで練習をみています。1部や2部の他の強豪校の監督が、その大学の教員や職員であることを考えれば、外に職業の場を持つ早稲田の監督の苦労ははかり知れません。

 

「(苦労があるとすれば) 職場と体育館が近ければいいなあと思います。仕事の繁忙期となると、どうしても仕事のことが頭から離れないので、切り替えが難しいです。また、監督の業務は、コート外の仕事が以外に多いので、仕事中にバレー関係者からの電話がかかってきたりしても、その場で会話できないので、そうしたことは効率が悪いです。”選手・チームのマネージメントと職場での組織・部下のマネージメントが似ているので、良い経験をさせてもらっている”と前向きにとらえています。」また、横河電機という職場が、スポーツに理解があるのがうれしいと言う。「職場には、早稲田・明治・慶応などの運動部(ラグビー、サッカー、バスケなど)出身者がいますので、よく理解してくれています。たまに遅くまで仕事していると『早く早稲田の練習行かなくていいの?ガツンと気合入れないと勝てないですよ!』と職場の仲間からもハッパをかけられます。自分としては恵まれていると思っています。とてもありがたいです。春のリーグも応援に来てくれました。」 また、監督として家族サービスが減ることも心配のようです。「家族との会話もある程度できています。子供が高校3年生と2年生で野球部で頑張ってるんですが、高校が自宅から近いので土日のバレーの練習が午後からのときは、午前中は野球の練習・試合を観戦に行ったりして、家族とのコミュニケーションも大事にしています。」

 

やはり目標は、1部復帰で早稲田バレーを復活させて、日本一を目指すことです。「現在は2部で低迷していますが、年初の目標では、大学選手権でベスト4を掲げました。最終的には、大学王座奪回が私の目標です。 しかも圧倒的な強さで、敵陣をねじ伏せたいですね。」

 

そのために、早稲田の学生として、現役選手には高いハードルを期待しています。「学生スポーツの中心・核となって、学生バ レーボール・あるいは、アマチュアスポーツのあるべき姿を目指し、活動しなければならないと思います。非常に抽象的でわかりにくいですが、実力が伴っていなければ、核となれない。同時に、実力だけあっても学生スポーツのあるべき姿からはずれたチームであったら、勝っても意味がない。『やはりスポーツはすばらしい!』とたくさんの人たちから思われ、勇気を与え、自分もあのような選手・人になりたい。あるいは、あの早稲田のようなチームをつくりたいと皆に思ってほしい。そしてそうした選手を輩出していくことが大事だと思います。早稲田は、そういった大きな役割を背負っていると考えます。」

 

厳しい入試を突破して早稲田に入学し、入部してきた現役選手には、誇りをもってプレーしてほしい、と言います。レギュラーもスタッフも、“金太郎飴になる必要はない”のであり、自分の強みや個性を活かし、自分はチームに対して何をしたいのか、何をもって貢献したいのかということを、遠慮なく発信し、体言していくことで、学生生活ももっと楽しくなると言います。

 

最後に、「受験環境の厳しさから、高校生へのスカウティング・アプローチに苦労している」と話しながら、その狭い早稲田の門をたたこうとしている受験生へこう呼びかけています。「高校生の時にしかできないことがたくさんあります。受験勉強というのもその一つだと思います。最近はいろいろな大学で、さまざまな入試方法がありますが、目標に掲げた大学に入学するために、好きではない受験勉強を一生懸命やるという経験は、すごく大切なことだと思います。高い目標を掲げ、それに向かって努力してほしいです。プレーのレベルは関係ありません。早稲田でバレーボールをやりたいと思ったらとにかくチャレンジし、門を叩いてほしいです。」

「情熱の人・吉井監督」と一緒に日本一を目指そうとする高校生の受験を、切に願っています。

 

吉井勝彦(よしいかつひこ)・・・昭和57年(1982年)群馬県立富岡高校から早稲田大学教育学部入学、バレーボール部へ入部。現役時代はセンタープレーヤーとして活躍し、4年生のときに東日本大学選手権準優勝、全日本大学選手権3位、リーグ戦は1部と2部を経験。1986年に卒業後、横河電機に入社し9人制バレーボールで活躍、93年全国9人制実業団選抜大会で優勝、91年全国実業団準優勝、関東実業団大会5連覇、国体入賞2度。現在横河電機株式会社 人財センター労政部に勤務。

この「えんじの人々」シリーズでは、稲門バレーボール倶楽部の会員の消息や各界で活躍するすがたを紹介していきます。そうした卒業生がいらっしゃったらご連絡ください。ご自分での文章も歓迎いたします。